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水曜の午後、来馬くんと一緒に過ごすのは最早習慣になっていた。 お昼前から受講内容が同じ場合が多いためだ。そのままお昼を一緒に食べて、午後からの講義も一緒。水曜日は来馬くんと過ごす日だ。
来馬くんとは高校生からの付き合いで、クラスメイトから始まった仲は、ボーダー同期入隊を経て格段に深まったと思う。今では大親友だ。少なくとも私はそう思っている。そんな彼は、驚いたように目を瞠っていた。


「鋼と幼馴染って、本当かい?」

「本当!全然変わってなかったよ。あ、アレだよ?大人っぽくなってたけどね、なんて言うか……雰囲気みたいなのが、鋼くん!って感じだったんだよ」

「ははは、雰囲気かあ。さすが幼馴染だね」


以前から私の幼馴染のことは話していた。来馬くんの隊員さんたちのことも聞いている。もっぱら話題に出るのは太一くんのことだったけど、これは太一くんの性格と共通の友人というのが大きい。だから不思議と、私の幼馴染である鋼くんと、来馬隊の攻撃手であるコウくんが同一人物であることに気付かなかった。まったくもって、世間は広いようで狭いらしい。


「それなら、今度うちの支部においでよ。みょうじさんが良ければ、ぜひ」

「ううーん、でも私なんかがお邪魔するのはなあ……」


B級上がりたて、という、やっと卵の殻が取れたヒヨコのような頼りない存在が居ては、文字通り邪魔になる気がする。それに、と心の中で続く言い訳は、ネガティブなものばかりだった。何かを察したように、来馬くんが申し訳なさそうな表情をする。


「ごめん、少し強引だったね」

「えっ、違う違う、嫌なわけじゃないよ」


慌てて否定して、渋った理由を話そうか少し迷ったあと、軽く話すことにする。


「私ね、多分鋼くんに嫌われてると思うんだよね。何が原因なのか分からないまま、うちが引っ越しちゃって。それっきりだから、私がちょっと気まずいなーって思ってさ。だから来馬くんもそうだけど、鈴鳴の人たちが嫌とかじゃないよ」


まあ鋼くんは覚えてないだろうけどね!と最後に付け足した言葉は、思ったほど明るくなかった気がする。上手くいかないなあ。
来馬くんが何か言いたげな顔をして、私は咄嗟に話題を変えた。来馬くんは優しいから、こういった話は苦手だと思う。それにどうせ話すなら明るい話題の方がいいに決まっている。自分にする言い訳というのは、どれも嘘っぽくて虚しいものだった。


「そうそう、それとね、私、B級に上がったんだよ」

「えっ、本当かい?それはおめでとう!良かったね、僕も嬉しいよ」

「暖かい言葉をありがとう……っ」