乱れ髪、男女の距離感

「っあ、イブラヒムくん!!」
突然、自分の名前を呼ばれびっくりしていると扉の近くで息を整えている桜華がいた。
「どうかした?」と声をかけるとひとつのバックを渡され、これ、立花に渡しておいて!!と彼女には珍しい大きな声とじゃ、お願い!と急ぎ足で自分教室に走っていった。時計を見ると、もうすぐHRのチャイムが鳴る直前で、彼女が遅刻寸前に登校なんてすることがあるんだなと、立花の席に渡されたバックを置いて自分の席に座った。しかし、急いでいたの髪をおろしている姿を見れたのはなかなかレアなのではないかと知り合いの弱みを見た気がすると、少し気分が良かった。
「もしかして、桜華来た?」
「あーチャイム寸前にお前にって来てそれ預かった」
「マジか、これ、刀也の体育着なんだけど」
「は?」
「HR終わったら交換しに行ってくる。」
「俺も行くわ」
「ふーん、あっそ」
いつもの時間に終わったHRだが、どうやら2組の方が早く終わったらしく、騒がしい雰囲気が漂っていた。
黛が「桜華〜刀也〜」と呼びかけると、「ごめん、ちょっと待って!」と言うと桜華の声が聞こえた。声のするほうを見ると、桜華が黛兄に髪を結んで貰っているようだった。いつもは低い位置に結ばれてるそれは所謂ポニーテールと呼ばれる高い位置になっていた。「ごめんね、刀也くんありがとう。」
「いえ、元はと言えば僕らが悪いので」
という会話と、「桜華届けてくれたのは有難いけどこっち刀也体育着」
「えっ!?ごめん、急いでて適当に渡しちゃった。ほんとに今日朝寝坊して、叶さんに起こしてもらったついでにこれ渡されたからどっちがどっちのか把握してなかったごめん!」
「まぁ、持ってきてくれただけ有難いと思ってるんで大丈夫ですよ」
「桜華が寝坊なんて珍しい事もあるんだね」
なんて、幼馴染トークをしている。
「黛、そろそろ一限始まる」
そう言うと、あ、やべと言って二人で自分の教室に戻った。
「お前らほんとに仲良いな」と言うと
「そう?普通じゃない?」なんて白々しいことを言う。幼馴染の距離感が分からない俺にはよく分からなかった。

2020/09/09