「あっつ」と暑さにやられている幼馴染の声。当の私は、ひたすらハンカチで滴る汗をひたすら拭いていた。炎天下の昼下がりに帰宅する夏期講習は、地獄以外の何物でもない。廊下には、生ぬるい風が拭いていて職員室に用があるという刀也くんを立花と二人で待っていた。
「帰り道、刀也にアイス買ってもらわん?私らもこんな暑い廊下で待たされてるわけだし。」
「それはあり。流石の優等生刀也くんでも、30分廊下で待たせるのは酷い。」
二人で深く頷きあっていると、職員室の扉が開いた。クーラーが効いているため、涼しい風が私たちの頬を撫でる。二人揃ってすずし〜なんて声を揃えた。刀也くんは、何してんだと言いたげな目で私たちを見ては、職員室に向かって失礼しました。と声をかけて扉を閉めた。
「ほら、早く帰るぞ」
そんな刀也くんをジトっとした目で見つめる私たち。はぁっとため息をついて、「好きなアイス買ってやるから、早く行くぞ」って。
その言葉で、ご機嫌になった私たちは刀也くんの手を引いて下駄箱まで駆けたのだった。
「ほんっと、現金なヤツらだなぁ…」
そうボヤく僕のことなんか気にせず、楽しそうにアイスを選ぶ幼馴染と妹を見ていた。妹は迷わずハーゲンダッツを買おうとしていたので、高いのは自分で買えよと釘を刺すと渋々アイスボックスを選んでいた。僕は、ちょっと迷ったがパルムにした。幼馴染は、まだちょっと悩んでいた。「どれで悩んでるんだよ」と声をかけると、「新発売のソーダアイスか、チョコミントで迷ってて……」
「今日はソーダにして、明日はチョコミント買えばいいだろ。」
「それもそっか、ん、ありがとう」
しれっと、明日も一緒に帰ることをあたりまえとかんじているあたり、未だに幼馴染離れが出来てないなと嗤ってしまう。いつか、離れることになるとは何処かで分かっていてもこの時がずっと続けばいいのに、なんてらしくないことを考えている自分に驚く。ただ、そんな考えも能天気にアイスを食べている二人を見て、どうでもよくなるのだ。
「アイス溶けないうちに、さっさと食えよ」
アイスもこの関係も溶けなければ、なんて夏の蜃気楼と共に消えていった。
僕らしくもないセンチメンタルなひと夏の思い出。
2020/09/09