ふたり初詣

初詣に行く予定なんてなく、ただこたつで暖かくして正月を過ごそうとしていたはずだったが、母の一言で予定が狂ってしまった。
「そういえば、箪笥から振袖見つけたから桜華、刀也と一緒に初詣行ってきたら?」
「えぇ、私はいいよ。寒いし面倒くさいし…」
「いいからいいから、せっかく振袖見つけたから着てみなさいって。着物なんて滅多に着ないんだし!」
そうゴリ押されては、勝てない。母は強しとはよく言ったもので、とりあえず、刀也くんと立花のいる3人のグループに初詣行きませんかと送っておく。もし、誰も来ないなら兄さんを叩き起して初詣に行く予定だ。メッセージを送ったのを見て母さんに引っ張られ、あれよあれよという間にメイクも髪の毛もすっかり綺麗にされていた。それを見た父さんは、お前も本当に綺麗になったなぁ…なんて涙声で言っていて、もう、泣かないでよ…結婚するわけじゃないんだし…と言っておいた。メッセージを確認すると、刀也くんが仕方ないから行ってやるよとの事だった。立花は既読がついてないから寝てるのかな。準備が出来たから今から行こうと送ると、直ぐに既読がついて、呼び鈴も鳴った。本当に準備がいい人だなぁ…父さんと母さんに行ってくるねと言うと、刀也くんによろしくなとの事だった。扉を開けると、当たり前に刀也くんがいて、刀也くんは目を見開いてびっくりしていた。そういえば、振袖着るって言ってなかった。
「あ、えっと、母さんが振袖見つけたから着せられただけだよ。ちょっと、足でまといになるかもだけど、」と、言い訳を並べていると、
「振袖、似合ってる。ほら、手。歩くの大変だろ」
不器用に手を差し出してくれて、振袖を似合うと褒めてくれる彼に、ありがとうと言うと、別に本当のことだし。なんて。近くの神社に行くと、それなりに混んでいてお正月だなぁなんて考えていた。鳥居横の小屋でくじが売られていて、どうせお祈りなんてしないのだしと刀也くんにくじ引こうと言うと、この行列並ぶのも大変ですしね。と、私の事を案じていてくれているのか、はたまた並ぶのが本当に面倒くさいのか分からないけれど勝手にちょっと嬉しくなった。くじを引くと私は可もなく不可もなく中吉で、刀也くんは大吉を引いていた。私がいいね、今年いい事あるね。というと、割ともういい事あって満足しましたけど。なんて。なんのことか分からず、欲が無いんだねぇとコメントした。彼はため息をついていた。そのあとは、適当に出店回ったり、配っている甘酒を少し飲んだりした。私は、甘酒が苦手なのが分かった。残したのは刀也くんがしっかり処理してくれました。ありがとう。回ってる最中はずっと腕を貸してくれたり、手を取ってくれたりと至れり尽くせりだった。彼の家は、みんな紳士的で育ちがいいなぁと実感した。立花もなんだかんだすぐ助けてくれるなぁ、と周りに恵まれていることを実感した。刀也くんは、結局家まで送ってくれてうちで少し父さんに絡まれてた。振袖を母さんに返して、普段通りの私を見た刀也くんは、安心したような顔をして、私の頭を撫でたあと、お邪魔しましたと言って自分の家に帰っていった。私は、動揺して立花にメッセージを飛ばしたが立花から返事が帰ってくることは無かった。

2020/09/09