踏鞴場の長と青年04
何か物言いたげに、だが結局は何も言わず立ち去ってしまった男。
その後ろ姿を見送りながら目を細めた。
欲しいのならば奪えばよいものを、何を躊躇う必要があるのだろうか。
「エボシ様。」
まぁ、こちらには何も渡すものなどないのだが。
「ふふっ…見たか、ケント。あやつの、あの顔。お前を諦める気はなさそうだぞ。」
「…お手を煩わせてしまい、申し訳ありません。」
「いや、なに。私の方こそすまなかったな。お前は『けりを着ける』と言ったのに、邪魔をした。」
「…いえ、別に……」
何か思うところがあるのだろう。
ケントは未だ片膝を着いたまま、顔を上げようとしない。
その頭をもう一撫でして、その名を呼んだ。
「ケント。」
「はい。」
「次はお前に任せよう。」
「は、」
反射的に顔を上げたケントの、その呆気に取られた表情を笑い、その手から刀を取り上げる。
そして後を追うようにこちらへと伸ばされる手にも構わず、それを少しばかり引き抜いてみた。
綺麗な刃だ。
よく手入れがされている。
「勝てるか?」
刀に目を落としたまま問う。
勿論『けりを着ける』と言い放ったぐらいだ、負ける気などなかったはず。
だが一瞬、ケントは逡巡した。
賢い男だ。
恐らくその言葉の重みを瞬時に悟ったのだろう。
そして再び頭を垂れ、ケントは口を開いた。
「お望みとあらば。」
次に二人が対峙する時、アシタカに向けられるものは最早個人的な感情ですらない。
そうと知った時、あの若者は一体どう出るのか。
「ふふっ、愉しみにしているよ。」
思わず、嗤ってしまった。
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そして鞘に納められた刀がその手に戻される。
(ちゃんちゃんばらばら、)
(始まり始まり)
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嘘つき、ロンリー。