東の青年と現代人02
※トリップ主。
※映画中盤の話。
石火矢の暴発。
その瞬間、時が止まった。
いや、実際にはただそう感じただけであり、止まったのは自身の呼吸だったのだろう。
その場にいる誰もが息を飲み、そしてまた誰かが堪えきれずに漏らした小さな呼気を合図に、時は再び動き出した。
「っ、ケントっ!」
エボシ御前ももののけ姫も捨て置いて、急ぎ倒れ伏すケントの下へと駆け戻るとその痩身を抱え起こす。
力なくこちらにもたれ掛かるその脇腹に、赤が滲んでいる。
それを一目見て、ざわり、と何かが下から臓腑を冷たく撫で上げた。
果たしてそれは、元は一つだった祟り神を通じて流れ込んでくる、ケントの受けた痛みなのだろうか。
だとするならば。
(嗚呼、私はまた間違えてしまったのか―…)
何故、ケントの傍から離れてしまったのか。
何故、ここにケントを傷付けるものは居ないと、そう断じてしまったのか。
何故、何故、何故。
なぜ?
なんのためにいま、ここにいる?
(―…… せ、)
何処からか聞こえてきた囁きに、心の臓が凍てついていく。
(ケントさえいればいい、それ以外は)
(この場に居るもの、いや、この世の総てを、)
呪え。
そう目の前を、青い炎が渦巻いて―…
「―…大丈夫、ですよ。アシタカさん。」
掠り傷です、と腕の中でケントが小さく笑う。
「それより、アシタカさんは怪我、してませんか?」
無理をしているのだろう。
弱々しく、だがこちらを安心させるようなそれにようやく我に帰った。
そして、何とか応えようと口を開く。
「おいっ!そいつ、シシガミ様のところに運ぶぞっ!」
「えぇいっ!何をしてるっ!?アカシシでも山犬でも何でもいいっ!乗せてさっさと連れて行けぇっ!!」
次々と降り掛かる声にそれは掻き消されたかもしれない。
それでも構わず、そっとケントを抱く手に力を込めると、そのまま抱き上げた。
---------------
(もう一度、ひとつになりて)
(もう二度と、)
---------------
リクエストありがとうございました!
*前次#
戻る
嘘つき、ロンリー。