設計士の同僚と同僚02
「あの話、考えてみたか?」
何の前触れもなく俺の元にやってきた本庄は、仏頂面でそう俺に聞いてきた。
最近はきちんと家に帰っているのか、その顔色は前より幾分ましになってはいるようだが。
(…あの話?)
そして一瞬、聞き逃しそうになったその言葉。
一体何の話だったか。
何か作業を頼まれでもしていただろうか。
だが記憶を掘り起こしてみたところで、ここ数日は製図に夢中でろくに人と話した覚えすらない。
まずい、本当に度忘れしてしまったようだ。
(俺も人のこと、言えないな…)
「ちょっと待ってくれ。」
仕事の話ならどこかに何か書き留めているはず、と改めて机の上に目を向ける。
そこは書き損ないで溢れ、重要書類の一枚や二枚紛れ込んでいてもおかしくはない状況に今更ながらぞっとした。
(…これを機に、少し整理でもしておくか。)
「早くしろ」と急かす本庄には悪いが、今声を掛けてもらえて本当に良かった。
そして本当に悪いが、少し後回しにさせてもらおう。
そう思い、とりあえず一番上に置いてある一枚に手を掛けようとして、
「お前の返答次第で、嫁を貰う準備をしなければならないからな。」
「は?よめ?」
思わず動きを止め、顔を上げた。
今の流れで、何故そんな話になるのか。
それとも嫁を貰う準備が出来るほど俺の作業が遅いと、そう皮肉っているのか?
(いや、確か前にも何か似た話をしたような……あ。)
「お前…あれ、本気だったのか?」
思い出したのは先日の一件。
考えるも何も、ただの寝言だろうと大して気にも留めていなかったそれ。
「本気じゃなかったら一体、何だと思っていたんだ?」
そう顔を顰める本庄に俺は何と答えるべきか。
これならまだ重要書類を放置して黒川さんに叱られた方がましだったなと、不謹慎ながらそう思ってしまった。
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(無意識に先伸ばししていた問題、)
(どんな計算よりもひどく簡単で難しい)
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嘘つき、ロンリー。