奏でる人々

剣道部の場合


「いつまでも夏休み気分じゃ困るからな。気を引き締めていくぞ。」

「一番夏を満喫したっぽいやつに言われても説得力ねぇなぁ。」


先輩として訓戒を垂れていると、本来その役目を負うはずの主将が笑いながら横槍を入れてきた。

だが確かに言われてみれば、部員の中で自分ほど肌の焼けた者はいない。


「どこに行ってたんだ?」

「海と山と庭。」

「庭?」


夏休み明けの早朝稽古、といっても内容は道場の清掃と精神統一を少々。

参加することに意義があり、その証拠に顧問は部員全員の出席を確認すると早々にいなくなっていた。


俺達部員も、主将の号令と共にすぐに解散する。


「おい。庭って何だ、庭って。」

「敷地内で人家の立っていない部分のことだ。」

「いや、そうじゃなくって。」


そして武道場に施錠し、鍵の返却のために職員室を目指す。

ちょうど登校時間らしく、校門から続々と流れて来る生徒の姿が見えた。


「花を植えたり、ベンチを置いたり…あぁ、小人の置物とか置くのもいいかもな。」

「だからそうじゃなくって…って、おい?どうした?」


ふとその流れの中に見知った顔を見つけ、思わず足を止める。


「おはよう、ケント。天沢も。」

「おぉ、はよー。」

「…おはよう。」

「今稽古終わりか?お疲れ。」

「いや、稽古というほどのものじゃ」

「おい。」


今度は恐る恐る横槍を入れてきた主将。

何だとそちらを向けば「先行くぞ?」と言われ、それを思い出した。


「あぁ…いや、俺も行く。じゃあケント。俺達職員室に用があるから、また教室でな。」

「おー。んじゃ、また後で。行こうぜ、天沢。」

「あ、あぁ…」


そして校舎へ向かう二人を見送り、俺達も再び職員室のある別棟に向かって歩き出した。

だが歩き始めてすぐ、隣の主将が吹き出す。


「しっかし、あれだよなぁ。」

「ん?」

「なんかあの二人、オセロみたいだったなぁ。」


確かに言われてみれば。

天沢の隣に並んだケントは、俺よりも黒く焼けたように見えた気がする。




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(…そう言えば、珍しい組み合わせだったな…。)

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嘘つき、ロンリー。