本と楽器と恋の物語

第二話


「なんか最近、機嫌悪いなぁ。」










図書室に用がある、と昼食もそこそこに保健室を出れば、俺の後を追ってきたナオ。

そして投げ掛けられた言葉に試験の出来が悪かっただけだと返せば、間髪入れずに「嘘つけ」と笑われた。


「どうせ夕子のことだろ?何だ?夫婦喧嘩か?」

「違ぇし夫婦でもねぇし。」

「あ、それとも杉村か?何かお前、あいつに冷たかったもんな!」

「…………」


妙に勘のいいナオにうんざりし、どうしたものかと考えを巡らせる。

原因は色々ありすぎて、それらを逐一説明するのが面倒だった。

大体俺自身、あまり頭の中が整理出来ていない。


この際、本当に図書室に行ってしまった方がいいのかもしれない。

あそこなら流石にナオも静かにするだろう。


そう方向転換しようとした瞬間、その姿に気付いて思わず足を止めた。


「?ケント?」


同じように足を止めたナオが不思議そうに俺の顔を覗き込む。

それから俺の視線を辿って、ますます不思議そうに首を傾げた。


「天沢がどうかしたのか?」

「あまさわ?」

「ほら、あの先生の後ろ、歩いてる奴だろ?俺、一年の時にクラスが一緒だったんだ。」


どこかで聞いた名前だと思ったが、どこで聞いたのかが分からない。

だが、そう言えば向こうは俺の名前を知っていたなと今更ながら気が付いた。


(…なんか、思い出したらまた腹が立ってきたな…)


(「お前、『コンクリートロード』は止めといた方がいいぜ」?)


(嫌な奴…何で初対面であんなこと言われなきゃなんねぇんだよ。)


(大体、お前誰だ?って話で……)



(…………あまさわ?)





(あ。)





「なぁ…もしかして、あまさわって天沢聖司?」

「え?あ、うん。多分そうだったと思うけど何で?」

「じゃあ多分あいつだ…本の貸出カードでよく名前見かける奴。」

「あぁ、前に言ってた読書のライバルってやつか。」

「別にライバルじゃねぇし。」


そうナオに修正を入れながら、少しだけ気分がすっきりした。


こっちがカードに気付いたくらいだ、きっと向こうもそこで俺の名前に気が付いたんだろう。

だから『知っていた』。


(…どんな奴かちょっと気になってたけど…なんか、がっかりだな…)


「…あー、なんか図書室行く気なくした。」

「お、珍しいなぁ。じゃあどうする?保健室戻るか?まだ今なら夕子もきぬちゃんもいるだろうし、」

「いや、もう教室に戻ろう。」


返事も聞かずに歩き出した俺の後にナオが続く。

そして二人隣に並んだ時にはもう、話題は今ハマっているマンガに移っていた。





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見逃してしまった一節。

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嘘つき、ロンリー。