本と楽器と恋の物語
第三話
「なぁ、俺、何かしたか?」
テストとテストの合間の、短い休み時間。
「ヤマかけが上手くいった」とわざわざ俺の席まで報告しに来た杉村を、素っ気なく適当にあしらったのがとどめになったらしい。
「何だよ、一体!?」
突然激昂した杉村に思わず肩が跳ねる。
杉村も我に返ったのか、すぐに謝ってくれたものの、その後に続いたのは少し泣きそうな表情での『なぁ、なぁ』攻撃。
「なぁって…俺が悪いんなら言ってくれよ。俺、鈍いからはっきり言ってくれねぇと分かんねぇよ…」
普段はこんな情緒不安定な奴ではなかったはず。
確かにナオの言う通り、俺はここしばらく杉村に対して冷たく当たっていたし、その自覚もあった。
それが、まさかここまで追い詰めているなんて思いもしなかった。
ちくりと、今更ながら良心が痛み始める。
「だから…別に何もないって言ってるだろ…」
実際、杉村は何も悪いことはしていない。
『好きな人がいるの。』
結局聞きそびれてしまったその相手に心当たりはあるが、もし仮にそれが当たっていたとしても別に杉村が悪い訳ではない。
そう改めて考えてみるとばつが悪くなり、そして後ろの席の夕子からの視線が無性に痛かった。
「ちょっと…あー…イライラしてただけだから。お前のせいじゃねぇし。」
「本当か…?」
「本当だって…ほら、向こうでお前、呼んでるから。早く行ってやれよ。」
「………分かったよ…」
何も知らない同級生の声を助け船に、そちらへと促す。
未だ納得がいかないらしく、渋々引き下がった杉村の後ろ姿を見送って、そっと溜め息を吐いた。
「杉村。」
最後にもう一度呼び止めれば、ゆっくりと振り返る杉村。
その目がまるで叱られた子犬のように見えたのは、多分罪悪感からだ。
「今日、部活休みだろ?良かったら放課後、一緒に勉強しねぇ?」
そしてようやくいつもの明るい表情で嬉しそうに笑ってくれた杉村に、俺も小さく笑い返すのだった。
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付け加えた一行。
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嘘つき、ロンリー。