本と楽器と恋の物語
第七話
「心配かけてごめんね。」
弁当を片手に席を立った瞬間、ナオと目が合った。
俺に何かを伝えようとしているらしく、必死にバタバタと動かされるその手に首を傾げる。
「どうした?」
「ちょ、ジェスチャーの意味!」
「だって聞いた方が早いし。で、何だよ?」
「あぁ、もう!あれだよ、あれ!」
「あれ?」
指し示された方を見れば、夕子と杉村が話す姿。
さすがにその会話の内容までは聞こえてこないが、これまでの経緯を考えるとそう悪い雰囲気ではなさそうだ。
とりあえず仲直り?は出来たんだろう。
一体、その何が問題なのか。
改めてナオに向き直れば、ナオは一瞬驚いたように目を見開いて、先程の俺と同じように首を傾げながら、
「なんかケント、変わった?」
「…保健室、行かねぇの?」
「え?行くけど…あ、ちょっと待って!まだ弁当出してない!」
「早くしろよ。」
無理矢理話題を変えると、それほど深く考えていなかったらしいナオはあっさりとそれに乗ってきた。
そして慌てふためきながら準備をするナオを待ちながら、もう一度、夕子達の方へと目を向ける
思うところが全くない、訳でもない。
夕子の立ち直りの早さには皮肉の一つも言ってやりたいところだし、いつも俺がいる場所に杉村がいるのかと思うと少しモヤッとする。
でも、それだけだ。
そうすんなりと受け入れている自分自身に思わず笑ってしまった。
(何だ、心配して損したな…)
そこでようやく机の上を整理し終え、鞄から弁当を取り出したナオがふと何か思い出したように顔を上げた。
「そういや昨日の夜、隣のクラスの奴と歩いてたんだって?この不良息子め!そんな子に育てた覚えはありません!」
「お前に育てられた覚えもありません。というか、それ目撃した奴もその時間に外出てたなら大概不良だろ。」
「俺というものがありながら!一体どこの泥棒猫と遊んでたのよ!」
「いや、お前それ何キャラ?」
「とまぁ、冗談はさておいて。相手は天沢だろ?」
急にテンションが戻ったナオに、ピンポイントでその名前を言い当てられ、正直驚いた。
何で分かったんだ?と問い返せば、「いや、だってほら、」と今度は夕子達とは逆方向を指し示すナオ。
つられてそちらを見れば、
「今まさに教室の入り口んところでお前のこと呼んでるし。」
天沢と目が合ったのだった。
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新しい章の始まり。
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嘘つき、ロンリー。