外伝奇集

vs唐傘連


先立って偵察に向かわせていた手下の一人が戻ると、その報告を前にケント様は苦笑を漏らした。


「浅野か…最早ここには踏鞴もないというのに、しつこいものだ。」


一体何が狙いなのやら。

前に浅野の使者が女共に馬鹿にされたことがあるらしいが、まさかその因縁という訳でもあるまい。


もしや師匠連が手を回したのだろうか。


だとしたら、


「とかく今は何らかの対策を…以前のような囲いもない立地故、守りの強化は必要かと。」

「地走り達に罠の用意を任せてある。何、あれは獣向きだが人間にも多少効果はあろう。」

「石火矢衆にも刀や槍を持たせ、備えるべきでは?」

「くっ…ならば名を改めねばならんなぁ。」


事は深刻だと言うのに愉しげに笑うケント様。

いや、ケント様にとってはこんなもの、児戯と大して変わりない。


ならば我らに恐れるものなど、何もなかった。


「先の一件で、我らも石火矢衆も随分数が減りました。今後、誰と事を構えるにしろ、やはりここは一度人を集め」

「戦をする訳ではない。」


久方ぶりの高揚感に突然、水を差す声が割り込む。

勿論、ケント様ではない。


今まであえて見て見ぬ振りをしてきたその存在に、思わず舌打ちしてしまった。


「…アシタカ殿。我らの討議に口を挟まないでいただきたいのだが。」


というか何故、当然の如くケント様の後ろに控えているのか。

そこは我らの、百歩譲って地走り達の定位置だったはずだ。


するとケント様が煩わしそうに手を振るわれる。


「止せ止せ、構うな。これのことは気にするだけ無駄だ。」

「しかしケント様…」

「俺ももう諦めた。」


そう溜め息を吐くケント様から哀愁漂い、その姿が大層痛ましい。

それもこれも皆、アシタカのせいだ。


「ケント殿、少しお疲れのようだが休まれてはどうだ?」

「…どの口が言っておる。ええい、いらん。触るな。」


何やら我らを置き去りに始まった攻防に、ちりっと空気に殺意が混じる。


この際、石火矢衆と地走り達にも声を掛け、我らは一つに纏まるべきだ。


その名も『ケント様親衛隊』。
敵はアシタカ、ただ一人。




----------------
(まだまだ、中盤戦)

*前次#

戻る

嘘つき、ロンリー。