外伝奇集
第一印象は?
「お初にお目に掛かります。」
号は『ジコ坊』、名は『ケント』。どちらでも、どうぞお好きな方でお呼びくださいませ。
そう言って、胡散臭い笑みを浮かべるのは師匠連より遣わされた男。
噂には聞いていたものの、実際会うとなるとその姿は思いの外年若く、ゴンザなどが頻りに「偽者ではないか」と怪しむのも無理のない話だった。
その突き刺さる視線を知ってか知らずか、男はますます笑みを深める。
「しかし、たたら場を納める女主人と言うから一体どんな女傑かと思えば、何とお美しいこと…ぜひとも個人的にお近づきになりたいものですなぁ。」
「貴様っ!エボシ様に色目を遣うとは…!」
「止せ、ゴンザ。」
「しかしエボシ様!」
「あまりこれをからかうなよ、『ジコ坊』。」
今にも飛び掛からんばかりのゴンザを制し、可笑しげにこちらを見やる男に声を掛ければ一瞬、細められた目。
「いやはや、これは失礼した」と大仰に肩を竦め、そして『ジコ坊』は居住まいを正した。
「さて、石火矢衆をお望みでしたな。」
先程と同じ笑み、だがその質は明らかに先程までとは違う。
空気が、変わる。
(なるほど…これは正に『きれもの』。)
「師匠連への見返りは?」
「書状に全て記していたはずだが。」
「なに、ただの確認ですよ。」
「もののけ達を一掃し、山を削れば鉄も増える。その分を幾らか、そなた達にくれてやろう。」
「大いに結構。くれぐれも違われませぬように。」
懐から書簡のような物を取り出すと、ジコ坊はそれをこちらへと差し出した。
ゴンザに目配せをし、それを受け取らせる。
「しかし普通、岩とは避けて通るもの。それを打ち砕いて通ろうとするとは、いやはや何とも豪気なことで。女にしておくのが勿体ない。」
そしてゴンザから私へと手渡されるのを見届け、ジコ坊が笑う。
「そなたも本当によく喋るものだ。男にしておくのが勿体ないな。」
そう笑い返してやっても、奴は笑うだけだった。
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(第一印象は、共に『最悪』)
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嘘つき、ロンリー。