仮想の物語
閑話〜若い飛行艇乗りと
※二話と三話の間辺り。
どんなに手を伸ばしても届かない
「―…そう落ち込むなよ、ヴィスコンティ。」
喧騒をBGMに酒を呷り、苦笑する友人に肩を叩かれる。
そして何度も繰り返される慰めの言葉に、いい加減うんざりしてきた。
「相手はあのポルコ・ロッソにも勝ったとかいうバケモンだ。元々、俺らが敵う相手じゃなかったのさ。」
あぁ、正にその通り。
あんたの言うことは正しいよ、シニョール。
八つ当たり気味にそう言い放てば、相棒は肩を竦めてどこかへ行ってしまった。
他の仲間の元へ戻ったのだろうか。
それを見送って、またグラスに酒を注ぐ。
(何が『ティベレの狼』だ…負け犬もいいところだ。)
「っ、くそ…っ」
いつもは美味い酒がやけに苦い。
喉が焼けるようだ。
(どいつもこいつも…っ)
また誰かに肩を叩かれ、「しつこいぞ、バラッカ」と吐き捨てる。
てっきりあの陽気な酔っ払いが戻ってきたのかと思っていれば、
「お前、まだそんなキツイの飲んでんのか?」
掛けられた声に勢いよく振り返った。
「あ、んたは…」
「マスター、一杯くれ。」
何で。どうして。
疑問詞は脳内をぐるぐる巡るばかりで一向に言葉として紡げない。
そして彼に会えたこと、声を掛けられたことを素直に喜ぶことも出来なかった。
(最悪だ……)
あのアメリカ野郎に負かされた一件は、きっと彼の耳にも届いているはず。
こんな惨めな姿、彼に晒すつもりはなかったのに。
「腐るんじゃねぇよ、若いの。」
「っ…!?」
俯いているとぐしゃぐしゃと髪を掻き撫でられた。
慌てて頭を押さえれば、笑い声。
「ジュニア。」
「お、サンキュ。ほら、飲めよ。」
「え、あ……」
目の前に置かれたのは、いつか彼の人が飲んでいたもの。
思わずその顔と見比べてしまう。
「自分に厳しくするのも結構だが、たまには甘やかしてやれ。」
戸惑いを隠しきれない俺に構わず、その人はまたいつかと同じように金をカウンターに置いて行ってしまった。
その背中に一瞬手を伸ばしかけ、止める。
そして勧められた酒を一口含めば、それはどこか優しい味がした。
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届かないからこそ焦がれてしまう
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嘘つき、ロンリー。