太古の神々の物語
あるところに
号は『ジコ坊』、名は『ケント』。
若くして石火矢衆を率い、時として唐傘連や地走りすらも従える青年。
一体どのような経緯でこの世界に身を置くようになったか知らぬが、今では師匠連きっての『きれもの』と呼ばれるまでになっていた。
そう、『きれもの』。
単に『切れ者』と純粋に感嘆し、嫉む者も多いが、その字に『切れ物』と当てる者も少なからずいた。
「刃物はよく切れるに越したことはないが…切れすぎるとちと厄介だ。」
そんな矢先に彼へと下されたのは、シシ神退治の命。
退治と銘打ってはいるが、つまりは神殺し、禁忌の所業だ。
一介の人間の手に余ることは誰の目から見ても明白。
「滞りなくその首が手に入ればよし。…万が一、刃が折れてしまったとしても、それもまたよし、だ。」
終始にこにこと笑みを浮かべながら二つ返事で応えた青年は、それらの思惑に気付いているのだろうか。
「それでは早速仕度をば、」
「どうするんだ?」
いや、
「まずはそのシシ神とやらをこの目で見んことには話になりますまい。」
総てを知った上で笑っていたのだろうか。
(あぁ、あれこそ正に『きれもの』…)
値踏みされていたのは一体どちらやら。
『ジコ坊』の根城を抜け出てようやく、男はそっと息を吐き出した。
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嘘つき、ロンリー。