太古の神々の物語

第二話


「待て待て、拙僧が見てやろう。」








ふと我に返ると、すでにこちらへ背を向けて歩き出していた男。

慌ててヤックルの手綱を引き、その後を追った。


米売りの女が何か言っていたが、そんなもの気にしてはいられなかった。


しばらくして男が気怠そうに振り向く。


「今ので借りは返したつもりなのだがなぁ…」


そう困ったように男は目を細め、口元にはうっすらと笑み。

まるで面のように造られた微笑みではあったが、それは確かに美し、


「…また、だんまりか…」


ぼそり、と。

言われてみれば、まだ一言も言葉を交わしていないことに気付く。


しかし、彼の者を前にすると何を言えばいいのか分からない。


名は?

何処から来た?

何処へ行く?


聞きたいことがありすぎて、いやそれよりもまず、


「怪我は、ないだろうか…?」


布越しのせいか、少しくぐもってしまった声。

だが、それはちゃんと通じていたようだ。


「怪我…?」


侍に追われるその姿を見て、何故か知らないが、傷一つ負わせたくないとそう思った。

すると身体が勝手に動いたのだ。


そう話せば、男は居心地悪そうに私から目を逸らして溜息を一つ。


そして後ろを見遣った。


「…まぁ何はともあれ、一先ずここを離れるか。」


人前で砂金など見せるとな、真に人の心の荒むこと麻の如しだ。

そう言うと、下駄を鳴らして唐突に駆け出した男。


その後を追うのが、やはり当然のように思えて、私はヤックルに飛び乗った。


その時ふと、


(いや、そうか…)


もし傷の一つでもあれば、同行する理由になったのか。

何故か、そう思った。




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責任を取らせてください。


(!?)
(?どうかされたか?)
(いや…何やら急に寒気が…?)

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嘘つき、ロンリー。