太古の神々の物語

第三話


後で悔やむから後悔。







「ほぅ…猪がタタリ神になったか…」


夕餉の粥を煮込みながら、行きずりの同行者の話に耳を傾ける。


アシタカヒコと名乗った男。

その顔の覆いを取れば思った通り年若く、そしてその背には思った以上に厄介なものを負っていた。


(呪いを解く旅とは…まるで俺の行く先を暗示ているようではないか。)


思わず笑いを噛み殺す。


「さて…椀はあるか?まず食わねばな。」


出来上がった粥にそう促せば、差し出されたのは何とも雅な碗。

椀といい、装いといい、その出自に興味を覚えたが、所詮一夜限りの縁と深くは聞かず、ただ粥を注いで返した。


だがもう一つ、気になることが。


「…なぁ、アシタカ。わざわざ拙僧の隣に座らんでも、前が空いてるぞ。」


男二人が隣り合うなど狭いだろうに。

そう行儀悪く匙で向かいを指し示せば、「駄目か?」と問い返すアシタカ。

その表情はどこか悲しげで、とりあえず見なかったことにした。


薮蛇はあまり好まない。


「さ、そなたの米だ。どんどん食え。」


笑顔で流れを断ち切ればアシタカはしばし黙り込み、そして思い直したように懐から何かを取り出して見せる。


「このようなものを見たことは…?」

「ん?」


手のひらほどの、礫のようなもの。

アシタカ曰く「猪の腹から出てきた」というそれを一目見て、ふと脳裏にどこぞのタタラ場の女主人の顔が過ぎる。


一体何の因果やら。

後の仕事に支障が出ては困ると、知らぬふりをしようかとも思ったが、


(あの鬼神の如き力、何かに使えるやもしれんな…)


「…これよりさらに西へ西へ進むと、山の奥のまた山奥に人を寄せ付けぬ深い森がある。シシ神の森だ。」


軽く呼び水を撒いて、後はそなた次第とばかりに口を噤んだ。


アシタカもそれを察したのか、ようやく粥に手を付ける。

だが最初の一口後、なかなか箸が進まない。


「どうした?口に合わなかったか?」


それともまさか毒でも疑われているのだろうか。

そう思いつつも自分の分を掻き込んでいると、


「…いや、ジコ坊殿は良き妻になるだろうと思って。」


思わず粥を噴き出した。


あぁ、勿体ない!





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妙なものに懐かれた。

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嘘つき、ロンリー。