太古の神々の物語

第四話


「…そなた、何故まだここにいる?」







白い作務衣に赤い羽織、背には荷箱を負って手に唐傘。

そう昨日と変わらぬ姿で前を行くジコ坊殿にヤックルへの同乗を申し出たが、丁重に断られてしまった。


なんと慎ましい方だ。

それに、


『急ぎの旅だろう?てっきり拙僧が目覚める前には出立しているものとばかり思っていたんだが。』


目覚めてすぐ、出会って間もない私の心配までしてくださるとは、なんと心優しき方なのだろう。


『しかしジコ坊殿を一人にして、寝込みを襲われては大変だと』

『馬鹿か、お前。』


急に口悪くなったジコ坊殿はどうやら朝に弱いらしい。

その証拠にしばらく胡乱げに私を見つめていたジコ坊殿。

睨まれているというのに心が高揚したのは、彼のまた違った側面を見ることが出来たからに違いない。


そしてその後、欠伸を一つこぼして眠たそうに目元を擦る姿が大変愛らしく、



「アシタカ。」



ふと我に返ると、ジコ坊殿は足を止めてこちらを見ていた。

気付けばもう随分と進んでいたようで、いつの間にかジコ坊殿と私は川の辺へとたどり着いていた。


「あそこに人が。」


指し示された川岸にはジコ坊殿の言う通り、人の姿のようなものが。

ヤックルから降りて近寄ってみれば、まだ息をしている。


助けなければ。


「ジコ坊殿!手を貸し、て…」


そして振り向くと、そこには誰もいなかった。




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急に、もよおしでもしたのだろうか。


(お人好し?)
(甘っちょろい?)
(いや、あれはただの馬鹿だ。)

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嘘つき、ロンリー。