太古の神々の物語

第五話


逃げるが勝ち。








「ケント様!ご到着が随分と遅いので心配して、」


そう駆け寄って来た唐傘衆の一人が、不意に動きを止める。

そして恐る恐ると言ったようにこちらの顔色を窺ってきたので、何だかよく分からず首を傾げた。


「ん?どうした?」

「いえ…幾分かやつれられたように見えましたので、」

「気のせいだ。」


一瞬脳裏に束の間の同行者の顔が過ぎったが、きっとそれも気のせいだろう。


確かにここに来るまで色々とありはしたものの、結果的には奴を上手く撒くことが出来たので問題はない。

向かう方向が同じと知られ、それを「運命だ…」と言われた時には思わず頭を抱えたが問題はない。


「それより首尾はどうだ?どうなっている?」


話題を変えようと報告を促せば、さすが我が部下、心得たとばかりにすらすら述べ始めた。


「はっ!地走りの招集は抜かりなく。タタラ場の石火矢衆とも―…」


聞く限り、万事予定通り進んでいるようで何よりだ。

そう満足していると男は一瞬口を噤み、そして再び不安そうにこちらを窺って、


「あの、やはりどこかお加減が悪いのでは…?」

「………」


そんな分かりやすいほど疲弊しているのだろうか。

『肉体的に』ではなく、『精神的に』だが。


(…いかんいかん。こんなことでは師匠にどやされてしまう。)


どんな時でも本心は笑顔の下に隠せ、という教えだ。

一先ず、あの男のことは忘れよう。


そう気を取り直していつもの笑みを浮かべてやれば、ようやく目の前の部下は安堵したようだった。





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逃げなきゃ負け。

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嘘つき、ロンリー。