太古の神々の物語

第六話


ほぅ…と悩ましい感嘆の吐息。

つられるように隣を見ると、若く麗しい横顔が『何か』を食い入るように見つめていた。


「でいだらぼっち…ついに見つけた……」


何だか見てはいけないものを見たような気がして、つい目を逸らしてしまった。

振り向いたジコ坊様がこちらの様子に気付き、訝しげに眉を顰める。


「何をしている?早く見よ。」

「…シシ神様を見ると目が潰れちまいます…」


そもそもジコ坊様の命令でなければ、こんなところなんぞ来たくはなかった。

言外にそう含ませてみたものの、ジコ坊様はそれを顧みることなく、「それでもお前は西国一の狩人か」と鼻で笑う。


「でいだらぼっちはシシ神の夜の姿だ…今に夜から昼の姿に変わる。」


消える場所が奴の住み処だ。

そう当たりを付けたジコ坊様の瞳がより一層爛々と輝くのを見て、思わず唾を飲み込んだ。


「ほ、本当にやるんで…?」

「なに、案ずることはない。雑事はタタラ場連中がやってくれよう。書状の準備は?」

「ここに。」


いつの間にそこにいたのか、唐傘衆の一人がジコ坊様に何かの書簡を差し出した。

そしてそれは確認されることなく、懐へと仕舞われる。


「あんな女、いっそ組み敷いてしまえば簡単なのでは?」

「気の強い女は嫌いじゃないがな…寝首を掻かれては敵わん。それこそ神の祟りより恐ろしいものよ。」


場にそぐわぬ軽口の応酬にぞっとする反面、さも当然のようにジコ坊様の隣に並ぶ唐傘が妬ましく思えたのも事実だ。

頭巾の合間からこちらへ向けられた目がどこか勝ち誇ったように見えた。


「頭。向こうで猪達に奇妙な動きが、」

「…すぐに行く。」


手下より知らせを受け、ようやく頭を切り替える。

そして口内に広がる鉄の味を感じながら、ジコ坊様に今し方受けた報告を告げるのだった。




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あなたが望むのならば、死の神さえも恐れはしない。

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嘘つき、ロンリー。