太古の神々の物語

第七話


兄弟達から森の様子を聞いていると、背後で身動ぐ気配がした。


「起きたか?」


昨夜のタタラ場襲撃で、私とあの女の間に割って入ったアシタカという人間。

私を抱えてタタラ場を出ようとした瞬間、鉛弾を腹に一発喰らったらしい。


別に見捨てても良かった。

自分が助けられたなんて思ってもいなかった。


ただ「借りは返すもんだよ」と母さんから教えられて育ち、何よりアシタカに寄り添うアカシシのヤックルに頼まれたのだから仕方ない。


それにシシ神様も、奴を生かした。


「アシタカ?」


引き続き猪達を見張るようにと兄弟を見送り、アシタカの方へと近寄ってみる。


傷が癒えたとはいえ、まだ本調子ではないのだろう。

ぼんやりと虚ろな目が私を捉え、吐息のような返事が返ってきた。


そしてアシタカは己の右手を見つめると、今度は本当に溜息を吐いた。


「夢を見た…」

「ゆめ?」

「痣が、消える夢を…」


そして握られた拳が小さく震える。


遠い東の国で、タタリ神の呪いを受けたというアシタカ。

その呪いを解くための旅の道中だったらしいが、あのシシ神様でも癒せなかった、いや癒さなかったものだ。


この先に望みがあるとは到底思えない。


(人間は嫌いだ……でも、)


ヤックルの話、実際に見聞きしたアシタカの言動。

それらの影響からか、気付けば少し同情するぐらいには心を許せるように、



「この腕では、ジコ坊殿を掻き抱くことも出来ない…!」

「何だ、思ったより元気そうだな。」





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思わず目を逸らしたのは、「見てはいけない」と本能がそう囁いたから。

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嘘つき、ロンリー。