太古の神々の物語

第十一話


「受け取れ、約束の首だ!」









懸命の説得も苦し紛れに放った刀も、ついには意味を成さなかった。

それともこうなることは初めから、避けることの出来ない定めだったのだろうか。


「…邪魔をするか、アシタカヒコ。」


エボシ殿が吹き飛ばしたシシ神の首を追って来たものの、それはよりにもよってジコ坊殿の手の内にあった。

望まぬ対峙に思わず言葉が詰まり、さらに追い撃ちを掛けるようにジコ坊殿がせせら笑う。


「そなたは拙僧の味方だと、そう申していたではないか。」

「っ……」


惑う心を見透かしてか、傍らのサンが鋭く私の名を呼んだ。

顔を上げれば、文字通り死の神へと変貌を遂げたシシ神が首を求め、すぐそこまで迫っている。


時間が、ない。


「そなたを、死なせたくはない。」

「…相も変わらずお優しいことだ…だが、いずれ陽が昇ればあれも消え失せよう。」


さすれば俺の勝ちだ。

恍惚と愛おしげに首桶を一撫でする様に、ちくりと胸が痛む。


それはまるで、


「何が望みなのだ…?」

「何を今更。天地の間にある総てを欲するは人の業というものだろう?」


果たして本当にそうだろうか。

今のジコ坊殿には、金も不老不死も何もかも、その目に写っていないように私には見えた。


「そなたはシシ神に憑かれている…」

「そうかもしれん、なっ!」


不意に薙ぎ払われた小刀に、反射的に後退する。

そして頬を切られ、衣を切られ、さらに後退。


視界の端で、サンもまた別の者に応戦していた。


(このまま…少しでも首桶からジコ坊殿を引き離すことが出来れば…っ)


途端に上がる悲鳴。

見ればシシ神に行く手を阻まれ、担ぎ手達が首桶を放り出している。


嫌な予感がした。


「っ、させるかっ!」


何の躊躇いもなく私に背を向けるジコ坊殿。

そして次の瞬間、転がり落ちていく首桶へ向けて手を伸ばすのだった。




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化け物などに渡してなるものか。


(そう歯噛みしながら、私もまたその背に向けて手を伸ばした。)

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嘘つき、ロンリー。