あかイおに

番外編:死に分かつたら


※死ネタ注意。








その村では『鬼』を祀っているという。


それを聞いた瞬間、邪教の類いかと身構えれば、こちらの様子に気付いた女が豪快に口を開けて笑った。


「本気にしないでおくれよ、旅人さん!鬼なんて言ってもね、あそこにいんのはただの人さ。」


それにしては大層立派な墓だったような。

なんて思い返したのは村と森の境に建てられた、人の背丈ほどある石塔。


そして、その前にて静かに手を合わす青年が一人。


「赤い髪の、少し変わったなりしたやつでね。まぁ、そこそこいい男だったんだけど、主人以外にゃ目もくれないのが玉に瑕。ただその力の強さって言ったらそりゃあもう、すごいのなんのって!」


牛より大きな山犬を軽々と投げ飛ばしてみせるは、まさに鬼神の如し。

そう愉しげに『鬼』と呼ばれる所以を語る女に、「はぁ」だの「へぇ」だの相槌を打ちながらふと疑問に思った。


「その方が亡くなったのは、その、戦か何かで…?」

「いんや、流行り病でね。」

「病?」


その言葉を反芻し、思わず「鬼の霍乱だ」なんて呟けば女がまた笑う。

曰く、以前まったく同じことを言った人がいるのだとか。


「他のやつらよりは長く持った方だけど、でもそれだけさ。死んじまったら鬼も人も変わりゃしないよ。」


一瞬、女が少し寂しげに目を伏せる。


恐らく故人を偲んでいるのであろう。

何だかんだ言いながらも善き御仁であったに違いない。


だが本当に一瞬のこと、誤魔化すように女は肩を竦めて続けた。


「でもまぁ、ちょっとはご利益があるかもしんないね。何ならあんたも一度、手を合わせてみたらどうだい?」


きっとこれからの旅を見守ってくれるよ…赤い鬼が、だけどね。


なんて冗談めかされた言葉に小さく笑い返せば、突然慌てふためいて戸口から顔を覗かせる者が現れた。


「おトキ!おキヨのところ、そろそろ産まれそうだよ!」

「本当かい!?」


反射的に腰を上げそうになった女がこちらを見やる。

溢れんばかりの、歓びに満ちた顔だ。


「悪いね、旅人さん!ちょっと行ってくるよ!そろそろうちの馬鹿亭主も帰ってくるからさ、まぁ、ゆっくりしていきな!」


そうは言われても家主のいない家に一人、身を置いておくというのも落ち着かない。

ならば、と女に続いて腰を上げようとすると、ほとんど戸口の外に出ていた女が振り返った。


「あぁ、もしケントのところに行くってんなら、アシタカさまの邪魔はするんじゃないよ!」

「アシタカさま?」




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(それは主人を遺して逝った、赤い鬼の話)

(だが、「あの石の下に屍はない」と聞いたのは、もうしばらく後のことだった)


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嘘つき、ロンリー。