物語を紡ぐ物語
そこで、
とりあえず自分のすべきことは何かと考えてみた。
「今日も精が出るわね。」
そう苦笑する友の視線の先には、ただ黙々と刀を振るう姿が一人。
今年十七になったアシタカ様は「より鍛錬に励むように」と言われ、その言葉を忠実に実行しているようだ。
勿論アシタカ様が勤勉なのもあるが、何よりそれを言った相手の影響が強いだろう。
「あのケント様のお言い付けだもの。張り切るに決まっているわ。」
昔から兄のように慕っていたが、最近ではいっそ崇拝に近いものを感じる。
だから「カヤがますますやきもきしそうね」と笑って付け足せば、同意ではなく何故か意味深な笑みが返ってきた。
「そういうそっちこそ、ケント様とはどうなの?」
「え?」
思わずどきっとして、否定するのも忘れてしまった。
「お食事とか身の回りのお世話とか…あんたが一番、お傍にいるじゃない。」
「…それは…」
ケント様はいずれ、この村のかんなぎとなるお方だ。
お仕えするのは自然のことで勘違いしてはいけない。
私などが、想ってはいけない。
(でも…)
『占い?まさか。』
ふといつだったか、そう苦笑するケント様を思い出した。
石を転がしたり、貝を裏返してみたり。
ただ徒に弄んでいるようにしか見えないその手元は、私には何をやっているのか分からなかったけど。
『これは、そう…ただ遊んでいるだけだよ。』
今日もまた、「遊び」と称されたそれは繰り返されているのだろう。
あの薄暗い小屋の中で、たった一人で。
『ケント様の言葉には必ず意味がある。私はそれに従うだけだ。』
「…ケント様と言えば、さっきね。」
そう切り出すと、アシタカ様に向けられていた視線がこちらへと向けられる。
「森へ行くならじいじの言うことを聞くように、って。」
「なぁに、それ。まるで子どもに言い聞かせるみたいね。」
くすくす笑う友に、上手く話を切り替えることが出来たと察した私はそっと安堵した。
だからその後カヤと会っても、ケント様の言葉を正確に思い出すことが出来なかった。
『カヤと三人で森へ行くなら、くれぐれもじいじの言うことを聞くんだよ。』
--------------
(流れに逆らわず)
(道を逸れることもなく)
(ただ、その時が来るまでは)
*前次#
戻る
嘘つき、ロンリー。