物語を紡ぐ物語

また、


軌道修正。










(……おかしい…)


この世に生を受け、早二十年。

これまで何度となく抱いてきた疑問だが、流石にこれは何だかまずいような気がしていた。


「…静かだな、アシタカ。」


不安が焦りに変わりそうになるのを抑え、そっと深呼吸。

必死に平静を装いながら、前を行く背中に声を掛ける。


「この辺りは戦が多いと聞いていたのだが…」

「確かに…道一つ外れただけでこうも違うとは、不思議なものですね。」


そして返ってきた答えに、思わず両目を覆った。


(やっぱりか…やっぱり違う道だったか…!)


恐らくは数刻前、『ナゴの守』の足跡を見失い、分かれ道に差し掛かったあの時だ。


『少し様子を見てきます』と先にヤックルを走らせ、戻ってきたアシタカが選んだこの道。

一人旅ならともかく、俺に対して妙に過保護なこの年下の友人がわざわざ危ない方を選ぶ訳がなかった。


(いや、本心としてはありがたいけど…俺も別に危ない方へ行きたくはないんだけど…!)


だが、くにを出て早数日。

本来ならば侍同士の小競り合いに遭遇し、そこで『アシタカ』は『ジコ坊』を助けて『シシ神の森』への道を示される…はずだった。


何故そんなことが分かるのかと問われれば、「知っているから」としか言いようがない。

そして何故知っているのかと問われれば―…






いや、きっと誰も信じてはくれないだろう。


(今から引き返すべきか?それともこの先、何か予定調和が起こるのか…?)


果たして『ジコ坊』は無事だろうか。

いや、俺の知る限りでは放っておいてもあれは死なない、はず。


ならば今大事なことは『シシ神の森』へ向かい、その途中『山犬の姫』に会うことだろう。

そして『タタラ場』の人間も助けておかなければならない。


でなければ、


「ケント様?」


この青年を救うことは出来ない。


「いかがされました?」

「…川だ。」

「川?」

「森の方から、水の音がする。」


それを目指そう。

少々突拍子のない方向転換だと思ったが、(まぁ、村でも不思議ちゃん扱いだったし…)と無理矢理自分を納得させる。


そして案の定、アシタカは何の疑問を抱く様子もなく二つ返事で応えるのだった。





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(これで正しい、はず。)
(これが俺の知る、『もののけ姫』ならば。)

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嘘つき、ロンリー。