物語を紡ぐ物語

それに、


聞いたところによれば、










たたら場を訪れたのは、奇妙な出で立ちの旅人達だったそうだ。

顔はすっぽりと覆いで隠し、晴れの日だというのに簑を身に付け、傍らに控える供は馬ではなく見慣れぬシシ。


仲間の命の恩人とはいえ、よくそのような得体の知れぬ者達を懐に居れたものだと呆れたが、それらを聞いたお頭は「エミシの一族やもしれぬなぁ」と顎を一撫でし、ただ笑った。


―…昨夜発ったと?入れ違ってしまったか。


―…聖人の如く清廉な男と、鬼神も恐れる力を持った青年であったよ。


―…それはぜひ、一目見てみたかったものだ。いやぁ、実に惜しいことをした!


なんてやりとりを何とはなしに耳にしながら飯をかっ食らったのが、もう随分と昔のことのように感じる。


「シシ神の首は近いぞ!」


女の鼓舞する声にふと我に返った。

どうやら見慣れぬシシと山犬の、走り去る後ろ姿に目を奪われていたようだ。


途端、身に纏った獣の血の臭いが鼻につき、思わず眉を顰める。


それは酷く生臭く、吐きそうになる。


(…なにを、いまさら……)


常の仕事と勝手が違うため、らしくもなく緊張しているのだろう。


何せ狙う首は、もののけとは言え神のもの。

信仰というものを持たぬこの身にも、畏れは、ある。


(……いっそ、このまま逃げてしまおうか…)


列なす唐傘共やたたら者達とは違い、俺達地走りはただ徒党を組んでいるだけ。

一人二人消えたところで誰も気付きはしない。


誰も、気にも留めない。


(菩提を弔う、なんて殊勝な真似は出来んが……せめて、この血を拭って)



『…何を言っても無駄だよ、アシタカ。先を急ごう。』

『ケント様!』



悲しげに顔を歪めた聖人と、その後に付き従う鬼神。

心乱すは奴等の仕業か。


今なら何となく、たたら場連中の気持ちが解るような気がして、思わず自嘲した。





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(行き着く先は、大団円。)

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嘘つき、ロンリー。