物語を紡ぐ物語

あるいは、


やはり、これは語るべきことではないのだろうか。










「ヒィさま!」


ぱたぱたと駆けてくる三人の乙女らの姿に、歩みを止める。

そして「どうしたのか」と尋ねれば、先頭を駆けていた娘が息を乱しながら封状を差し出した。


「じいじから文を、」

「いいえ。じいじも誰かから受け取ったと言っていたわ。」

「村の外から来た男の人が…ここらでは見掛けない、狩人風だったと。」

「それで、その者は?」

「じいじに手紙を預けて、そのまま立ち去ったそうです。」


相手に心当たりはない。

一先ず礼を言ってそれを受け取ると、再び駆け出した乙女らを見送った。


(?何か、入っておるようだな…)


ちょうどすぐ側に腰掛け岩を見付け、そこに落ち着くと封を切る。

中から出てきたのは白い獣の毛のあしらわれた首飾りと、一枚の文。

それらを一目見た瞬間、何とはなしに今は遠くにいる我が子のことを想った。


そして文の最後にその名を認め、ふっと頬を緩める。


「ケント……」


憂いは、晴れた。

アシタカも自分も息災である、と。

お供のアカシシらの機微まで書いてあるところが実にあの子らしい。


そして、



(……やはり、ここには戻らぬか…)



文中、頻りに親不孝を謝罪するケントだが、それほどの衝撃はなかった。


予感、のようなものがあった。

今から十数年前、森で人知れず産声を上げていた赤ん坊を連れ帰ったあの日から、ずっと。


「なに、子とはいずれ巣立つもの。」


そう自分に言い聞かせながら読み進め、同封の首飾りについての記述に行き着く。


旅先で見知った山犬から頂戴したもので作ったと。



『気性の荒いもののけではあったが、我が子を想うその姿に、ふと貴女を重ねてしまった。』



その一言で、充分だった。






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(話して考え、書いて直して、忘れて聞いて、また語る、)

(ただ、それだけ)
(そうして紡がれる、物語。)




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嘘つき、ロンリー。