これまでの話




アシタカのことを一言で言い表すなら『質実剛健』。

馬鹿が付くほど真面目な奴で、少々融通の利かないところが玉に瑕。


「…ここにいたのか、ケント。」


そして時々、空気が読めない。


おかげで折角作り上げた甘い雰囲気が一瞬で霧散し、もう少しで落ちそうだった少女も正気に戻ってしまった。


「えっ…あっ…ごっ、ごめんなさいっ!」

「……あーあ。」


引き留める間もなく、顔を真っ赤に染め上げて走り去る少女。

恐らく初な彼女にとって、この状況は耐え切れない醜態だったはずだ。


自分もその一端を担ったとはいえ、流石に同情してしまう。


そんな少女の後ろ姿を完全に見送ったところで、ようやく俺は鈍感な幼馴染みへと向き直った。


「あんまり乙女に恥をかかせるなよ。」

「恥?」

「あー…いや。まぁ、いいさ。それで俺に何の用だ?探していたんだろう?」


俺の言葉の意味を計りかねているのか、不思議そうに首を傾げる様子に、ついつい浮かべていた苦笑が弛む。

それを誤魔化すように無理矢理話題を変えれば、アシタカは意外にあっさりと「あぁ、それが―…」と用件を切り出した。


いずれアシタカも、男女の機微というものを知ることになるだろう。

きっと年下の、だが早熟なかの乙女がそれを教えてくれるはずだ。


俺に靡くことのなかった、ただ一人の少女が。


「聞いているのか、ケント。」

「あぁ、ちゃんと聞いてるって。」


その時、馬鹿に真面目で少々融通の利かないアシタカはやはり、俺の所業を怒るだろうか。


それはそれで愉しそうだと笑いつつ、次の逢瀬の相手について思いを巡らせるのだった。





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(巻き込まれた第三者にはいい迷惑)

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嘘つき、ロンリー。