これまでの話




アシタカと、カヤ。

その二人が立ち並ぶ姿をよく目にするようになると、お節介な村のじいさま達はより一層喧しくなってきた。


曰く、「アシタカを見習って早く一人に絞れ」と。

そう急かされる度、俺は笑って誤魔化すしかなかった。


だが中には妙に熱心な説得者も、時折いる。


「振られた者同士、ただ慰め合ってるだけですよ。」


だから思わず、こぼしてしまった。


一拍の間。


「…ケント、お前……」


あぁ、やってしまったなぁ…なんて、どこか他人事のように思いながら苦笑混じりに肩を竦めてみせる。


相手は気まずそうに目を逸らして、しばらく言葉を探すようにその視線をさ迷わせた。


結局何も見付からなかったらしく、最後は諦めたように溜め息で締め括られてしまったが。


「…ほどほどにするんだぞ。」


容認する訳ではない。

その失恋の痛手が癒されるまでは見逃すだけのこと。


暗にそう含ませながらもどこか気遣わしいその雰囲気を纏わせた相手は、きっと都合のいい、勘違いをしてくれたのだろう。


『振られた者同士』。

アシタカに選ばれなかった乙女達と、カヤに選ばれなかった俺。


なるほど、言われてみれば確かにその構図はごく自然でしっくりくる。


別に嘘を吐いたつもりはないが、いっそこのまま真にしてしまうのもいいのかもしれない。



なんて。




「…ほどほどに、ねぇ。」


そしてまた、誰とはなしに笑って誤魔化すのだった。





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(五つ紋で総てを隠せ)

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嘘つき、ロンリー。