仮想の物語
IF〜軍服の話
「軍服だと少女に威圧感を与えてしまう。」
「そう、ですね。」
「ちょうどいい、それを着て接したまえ。」
「………………は?」
if~第二回服装論争敗北後。
軍は縦社会だ。
どんな命令でも上司の言葉には絶対服従。
異を唱えるなど、以っての外。
たとえそれが、女装なんて嫌がらせにしか思えないものでも、だ。
「……………………いや、さすがにこれは無理だ。」
口元を押さえ、そっと視線を鏡から外した。
確かにこれなら軍人の威圧感はないが、代わりに色んな意味で相手の不安を煽ることになるだろう。
ただ身体の前面に押し当ててみただけでこの威力だ、実際に着た時の破壊力は計り知れない。
(……除隊覚悟で大佐に掛け合ってみるか…)
口惜しいのは、サイズ的に着れないことはない点だ。
これでは「自分には小さくて着れなかった」という、最も有効的な言い訳が成り立たない。
何度鏡をチラ見しても、多少スカート丈が短くなるぐらいで後は特に問題なかった。
男としての尊厳も揺らいだが、そこは気にしたら負けだ。
(……軍内を歩くには少々派手過ぎる…?…いや、それなら何故それを買ってきた?ということになってしまうし…………あー、くそっ)
赤いドレスを畳み、箱へとしまいながら考えを巡らせてみたものの、なかなか良い案が浮かばない。
とうとう最後のリボンすら結び終えてしまい、小さく溜息を吐いた。
そして不意に顔を上げると、
扉から顔を覗かせた同僚と、サングラス越しに目が合う。
「い、つから、そこ、に…?」
「っ、みみみ見てない!私は何も見てないぞ、ケント!」
同僚の反応は総てを物語っていた。
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必死に事情を説明するケント。
目を逸らし続ける同僚。
そしてその光景を陰からこっそり眺め、ほくそ笑む大佐の姿があったとかなかったとか。
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嘘つき、ロンリー。