若き参謀長の憂鬱

有害


若くしての出世は名誉であると同時に厄介の種にもなる。

そう当時の師には口を酸っぱくして教え込まれていたが、当時の俺にとってはどうでもいいことだった。


だからこそ今、そのツケが回って来たらしい。


罵声に嘲笑、そして軽い失望。

参謀長でありながら停戦を進言する俺に対し、周囲の態度は十人十色でどれも否定的な意味合いのものばかりだ。


唯一の救いは、王子の説得のおかげか、王が俺の言葉に耳を傾けてくれていることだろうか。


でなければ俺は今頃、『売国奴』とでも呼ばれていたかもしれない。


「だから私が言いたいのは停戦ではなく、終戦をだな…」

「何事にも段階というものがあるのですよ、王子。」


そして次の会談に向けての準備を進めつつ、今日もまた執務室に押しかけてきた王子のお相手をする。

いい加減、こめかみを揉みしだく仕種の意味に気付いていただきたいところなのだが。


「一度停戦し、話し合いの場を何度も設けて、お互い納得ずくでようやく終戦へと持ち込めるんです。」


自分で言いながら、思わず鼻で笑ってしまいそうになった。

停戦といえども戦火が絶える保証はなく、『平等の納得』もありえない。

そう言葉を飲み込んでいると、何やら難しい表情の王子が溜息を吐いた。


「これではいつまで経ってもソフィーの下へは行けないな…」


一瞬手を止めたせいで、ポタリとインクが紙の上に滴り落ちる。

汚れてしまったそれをしばし見つめ、無言で丸めると近くにあった屑篭へと投げ入れた。


それは現在、敵国中枢部に深く根を張っているであろう師への手紙だった。




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忠言に耳を塞ぐ愚か者よ、

(それを愛とも知らぬまま)
(ああ、いっそ悪魔に心を売ってしまおうか)

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嘘つき、ロンリー。