若き参謀長の憂鬱

悠然


一通り手を打ち、後は向こうの出方を待つばかり。

そんな小休止にも似た段階に入ったためか、ふと頭の片隅に置いていたある噂を俺は思い出していた。


「そう言えば、誰某との婚約を破棄されたとお聞きしましたが。」


机の上の書類を整えながら、雑談を装って話題の人物にそう話を差し向ける。

相手は特に疑う様子もなく、「もうケントの耳まで届いたのか」と苦笑した。


以前はこんな柔らかく笑う人ではなかったように思うが、やはり愛の力とやらは偉大だ。

なんて心の中で一人、皮肉を漏らした。


しかし意中の娘にはすでに恋仲の男がいると聞いていたが、


「心変わりは人の世の常と言うだろう?」


そう主張する王子の言葉を、「なるほど」と信じるフリをして飲み込んだ。

恐らく王子自身も本気でそう思っている訳ではないだろう。


「ケントはまだ結婚しないのか?」


ふと話の風向きが変わり、今度はこちらが苦笑する。


「そうですね。誰か好い人を見付けたら、」




『この身この心、その総てを生涯貴方様に捧ぐことをここに誓います。』




「…その時は。」


俺は上手く笑えていただろうか。





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そして断絶、

(それはあまりにも鋭すぎて)
(痛みすらも感じない)

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嘘つき、ロンリー。