若き参謀長の憂鬱

誘導


参謀長と王子は幼馴染みであるらしい。

きっとそんな関係も、周囲の嫉妬に拍車を掛ける要因となっているのだろう。


「それでは私はこの辺で失礼するとしよう。」


そんな周囲の目を知ってか知らずか、いや知らないであろう王子はここ最近、参謀の元をよく訪れる。

そして今日もまた、執務室を出ていく王子の後ろ姿を見送って私はそっと息を吐いた。


王子の方は分からないが、参謀はあまり王子のことを好んではいなさそうに思えた。

参謀が王子と話す時、苛立たしげにそのこめかみを揉む姿が印象的で、


「…暢気なものですね…」


無意識に発した己の発言に、ふと我に返る。

今ここにいるのは、自分だけではない。


「し、失言でしたっ!申し訳ありませんケント様っ!」


振り向いて慌てて叩頭すれば、降ってきたのは呆れたように笑う声。
 

「今のは聞かなかったことにしておこうか。」

「恐れ入りま、す…?」


顔を上げながら礼を述べれば、尻窄みしてしまったそれ。

だが参謀は大して気にした様子もなく、「それで?」と話を促した。

「え?あ、はい!こちらが先方から届いた書簡です。」

「……来たか…」


先程の余韻を残すことなく、表情を切り替える参謀。

どこか憑き物でも落ちたように穏やかだったそれは、私の見間違いだったのだろうか。




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知らぬ間に終わってしまった物語

(始まりも、誰も知らない)

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嘘つき、ロンリー。