若き参謀長の憂鬱
雄編
『あなたの視野はひどく狭いようですねぇ。』
鏡に映る自分の姿しか見えていない…いや、もしかしたらそれすらも危ういのかも。
そう言って、魔法使いは意地悪く笑いながら鏡を差し出した。
そこに映っていたのは、
「…どうしてカブだったのだろうな…」
ぽつりと漏らした独り言は、思ったより大きかったらしい。
それまで書類を睨んでいたケントがつられるように顔を上げた。
「かぶ?」
「私に掛けられていた魔法さ。カブ頭の案山子なんて、なかなかユニークな発想だと思わないか?」
そう笑いかければ、眉を顰めるケント。
当時の混乱を思い出したのか、それともただ単に現在の仕事の邪魔になると判断したのか。
その視線はすぐに手元の書類へと戻された。
「…お暇そうですね、王子。よろしければ、こちらにサインをお願いします。」
我が国が誇る若き参謀長殿にしては分かりやすいすり替えに、思わず笑みがこぼれてしまう。
それを少しからかってやろうと口を開く寸前、再び顔を上げたケントに先手を打たれた。
「一刻も早く、愛しのソフィー様にお会いしたくはないのですか?」
「………」
さすが参謀、いやさすが我が幼馴染み。
あっさり手玉に取られた私は言われるがまま、黙ってその書類を受け取った。
のだが。
(…確か、前にもこんなやり取りをしたな…)
それは国を離れる少し前のような気もするし、それよりずっと前の幼少期だったような気もする。
ひどく曖昧な記憶だが、それだけ私とケントの付き合いが古く長いのだと思えば感慨深い。
「王子?」
そして回想ついでに一つ、思い出したことがあった。
「そういえば、確かお前はカブが好きだったな。」
「…………」
一瞬顔を引き攣らせたかと思えば、次の瞬間には何事もなかったかのように書類に向かうケント。
どうやら私は本格的に仕事の邪魔だと判断されてしまったようだ。
そしてまた、誰かが嗤う。
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恋は盲目
(愛は緘黙)
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64000hitより。
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嘘つき、ロンリー。