若き参謀長の憂鬱
勇名
形だけの会談もようやく終わり、いよいよここからが本番だった。
そこかしこで交わされる雑談に紛れるようにして、それは静かに始まる。
「久し振りだな、ケント。」
「ご無沙汰しております。」
何気ない動作で近寄ってきた相手に対し、何気ない口調で返した挨拶。
一瞬、かつて師と呼んでいた男の目が何か言いたげに細められたことに気付いたが、気付かない振りをして肩を竦めてみせた。
こちらの意図が通じたらしく、男は「まぁ、いい」と苦笑する。
「書簡、読ませてもらったよ。」
「それで?」
「感触としてはそう悪くはない。が、もう一押し欲しいといったところだな。」
「と言うと?」
「お前だ。」
一拍の、間。
息まで詰めたのは我ながら少しわざとらしかったかと思ったが、男は特に気にする様子もなく言葉を続ける。
今重要なのは『演出』ではない、『台本』を最後まで読み上げることだ。
「参謀であるお前がいなくなれば、少しは停戦の意思も伝わる。なに、流石にそこまで馬鹿ではないだろう。」
「そうでしょうか?」
「そうだと願いたいね。」
「しかし評価していただいて恐縮ですが、私のような若輩者にそれほど価値などありませんよ。」
「おいおい、どの口が言ってる?今ここで、こうやって、俺と対峙しているのは一体誰だ?」
そう言って大袈裟に吐き出してみせた溜め息は恐らく、先程の俺に対する当て付けだろう。
その意図が通じたことを苦笑で示せば、男は肩を竦め、そして身を乗り出して最後の『台詞』を口にする。
「お前のその首、国のために差し出せ。」
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さぁ、今こそ幕引きを
(それは悲劇か、それとも喜劇か)
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嘘つき、ロンリー。