仮想の物語
設計士の同僚と夢の話
あぁ、これは夢だ。
でなければ俺が愛機以外の機体に乗っているなんてありえない。
そして、目の前にいる男も。
「どうだ?調子は。」
俺が機体から降りると、そう問い掛けながら近寄ってきた男。
真っ黒な髪に真っ黒な瞳、それと黄色い肌。
見るからに東洋人である男は飛行機の設計士だと言った。
俺も操縦士だと言ったきりで、それ以上はお互いに名乗っていない。
名も知らぬまま、俺達は繰り返し同じ夢を見ていた。
「前より断然いい。腕を上げたな。」
「…所詮、夢の中だ。何もかも上手くいくに決まってる。」
不思議と言葉が通じるおかげで不便はなかったが、男には少々お堅いところがあって俺はよく苦笑した。
一度「黒髪が綺麗だ」と褒めたら、何故だかひどく怒られたのも記憶に新しい。
東洋人の気質というものだろうか。
「いや、全てが思い通りにいくなら、俺は今頃天空の城に行っているはずだ。」
「天空…?」
「お伽話さ。そっちの国にはないか?そういう話。」
「……月に帰った女の話ならある。」
そう言って整備を始めた男の傍らに立ち、何となく手持ち無沙汰になった俺は空を見上げた。
龍の巣どころか雲一つない晴天。
ひどく静かだ。
「…きっと、それはお前の本当の望みじゃないんだろう。」
そんな静けさを遮って、不意に男がぽつりと呟く。
つられるように視線を男へと戻せば、こちらを見ることなく作業の手を止めることもない。
一瞬何の話だったかと首を傾げ、すぐに思い当たった。
「本当の望み…なるほどな…」
始まりは確かにそれだった。
だが今の俺はいつの間にか、それ以上に空そのものに夢中になっていたようだ。
「なら、こうしてお前と毎晩会うのが俺の本当の望みという訳だ。」
自分でも気付かなかった核心を突かれたのが何だか照れ臭く、ごまかすようにそう言えば、何故だかまた男に怒られてしまった。
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つかの間の邂逅。
(何だ、ケント。えらく機嫌が良いな。)
(そうか?夢見が良かったんだろ。)
(本庄?どうしたんだ、そんなに顔を顰めて。)
(…ほっとけ。これが地だ。)
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嘘つき、ロンリー。