仮想の物語
飛行少年の憂鬱
空が飛べると知った日。
空は飛べないと思い知った日。
「飛行船?」
「そう!もしかしたらそれに乗せてもらえるかもしれないの!」
「へぇ、そいつは凄いな。」
「勿論、ケントも来るでしょ?」
誘い文句、というよりも確認に近いそれ。
俺が断るなど全く思ってもいないその口振りに、思わず笑ってしまった。
するとそれを了承と受け取ったらしく、「楽しみだね!」と笑う彼女に俺はあえて訂正もしなかった。
勿論、飛行船に興味はある。
ただそうやって自分を誘っていたのは、いつも―…
「しっかしトンボのやつ、遅いなぁ。」
その瞬間、何気ない誰かの呟きがやけに大きく聞こえた。
「ねぇ、ケントは何か知らない?」
「さぁ…また『魔女子さん』のところに行っているんじゃないか。」
「あぁ、『魔女子さん』ね。」
適当に返した答えを苦笑混じりに納得され、ほんの少しばつが悪くなる。
きっと以前は、自分がその位置にいたはずだ。
『あれ?トンボは?』
『どうせまたケントのところでしょ。』
最近ようやく馴染んできた『飛行クラブ』の面々。
だがいくら見回したところで、そこに俺を誘った張本人の姿だけがない。
「そういえば飛行船の話、『魔女子さん』も誘うって言ってたけど、どうなったんだろ?」
「さぁ?でも来るのかなぁ?自分で空飛べるのにわざわざ飛行船なんて、」
「悪い。」
不自然に話を遮れば、不思議そうに視線が集まる。
そして「用事を思い出したから帰る」と、返事も聞かずに背を向けた。
またね、と後を追うように投げ掛けられる声。
それらに軽く手を振り返しながら、俺は次の約束をどうやって断ろうかと考えていた。
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(空なんて、)
(そう思ってしまった日)
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嘘つき、ロンリー。