大泥棒 対 名探偵
伯爵
この城の人間の危険意識は一体、どうなっているのだろうか。
盗みの下調べのために雇われている身でありながら、ふと心の底から心配になった。
髭を理由に『ボディーガード』の同行を拒んだ王女。
代わりに指名したのは『弟子』とは名ばかりの、どこの馬の骨とも知れない男で、だというのにそれを止めようとしない護衛の面々。
そして、極めつけがこれだ。
「一応渡しておく。目を通しておいてくれ。」
そう言って手渡された書類は、数日後に控えた王女一行の日本訪問に関するスケジュールや緊急時の連絡先など。
それなりに秘匿性が高いはずのそれらを前にし、もう一度改めて言いたいことがある。
俺は今、盗みの下調べのために雇われている。
「ー…だ。それで、…ケント?」
寄せられる信頼に良心が押し潰されそうになっていると、呼ばれた名前にふと我に返り、慌てて顔を上げた。
するとキース伯爵と目が合った次の瞬間、フッ…と柔らかく微笑まれ、少し戸惑ってしまった。
「彼はああ言っていたが、私は君に期待しているよ。」
「え?あ、ありがとう、ございます…?」
一瞬(何の話だ?)と思ったが、恐らく『彼』とは『次元先生』のことだろう。
どうやら『先生』から「半人前」と言われて落ち込んでいると思い、俺を慰めてくれているようだ。
(本当に、いい人だ…)
第一印象はクールな感じの伯爵だったが、俺が年下ということもあってか、意外とフレンドリーに接してくれている。
少々子ども扱いの嫌いがないでもないが、『先生』に比べれば断然マシだ。
そして、つられるように俺も伯爵に微笑み返した。
「それでは留守は任せた。」
「はい。」
しかし、いつだったか護衛のカイルさんにそんな話をしたら微妙な表情をされたのだが、あれは一体何だったのだろうか。
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(何かのフラグを立てた伯爵)
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嘘つき、ロンリー。