大泥棒 対 名探偵

探偵


キース伯爵の依頼を受け、早速事件の捜査に取り掛かろうと部屋を出た俺達だったが、しばらく行ったところで突然前を歩いていた『パパ』が立ち止まった。

危うくその足にぶつかりそうになる。


「?どうしたの、パ」

「先生。」


どうやら向こうから誰かがやって来るらしい。

『パパ』の後ろからそっと顔を出して見れば、伯爵よりも幾分若く見える男が一人。


「伯爵から話はお聞きに、………」


王宮の人間にしては少しラフすぎるその格好が気になり、じっと観察していると不意に目が合った。


「あ、えっと、こんにちは…?」

「…どこから連れてきたんですか?その子。」

「え、」


迷子か何かか、と問うより先に『パパ』へと向けられる疑いの眼差し。

『パパ』が舌打ちする。


「人を誘拐犯みたいに言いやがって…」

「だって前科ありじゃないですか。」

(ぜ、前科あり?)


おいおい、この人一体、何者なんだよ…

なんて少し戸惑っていると、その若い男は目線を合わせるように、俺の前に屈み込んだ。


「駄目だよ、坊や?こんな怪しい大人についてきちゃ。」

「おい。」

「お兄さん、パパの知り合い?」




そう何気なく質問した瞬間、ピシッと空気が固まった。




(へ…?)

「パ、パ…?」

「ばっ、おい…っ!」

「ぅえっ?」


慌てて男から引き離すように俺の肩を乱暴に掴む『パパ』。

だが、何だかよく分からないが手遅れだったようだ。


「あんた…子ども、いたのか…」


ぼそりと呟いた男に先程までの物腰の柔らかさは、ない。


「おまっ、何信じて」

「嫌がる俺にあんなことをしておいて…」

(あ、あんなこと?)

「無理矢理酷いことさせて…」

(酷いこと!?)

「全部遊びだったのかっ!」


本当にこの人達は何者、いや、どういう関係なんだ?


(というかこれ、すっげぇ修羅場じゃねぇか…?)


「…見損ないました。」

「待てっ!どこ行くんだケントっ!」


踵を返す男を引き留めようと『パパ』が手を伸ばす。

それを振り払い、一瞬振り向いた男はキッと『パパ』を睨んで、



「くにに帰らせていただきます!」




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(そして誤解が解けた後、小さな名探偵の頭にはタンコブが一つ)

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嘘つき、ロンリー。