仮想の物語
招かれざる客
※本編終了後。
先の失態により、軍部は将軍閣下以下多くの兵を失ってしまった。
そのため上層部は責任の所在を討論するのに日々忙しく、下は下で欠けた人員配備の穴埋めに右往左往する毎日。
かくいう自分もその場しのぎに無理矢理階級を上げられ、机の上には常に書類の山が築かれるようになった。
だから、きっと疲れているのだと思った。
疲れているからこんな幻覚を見るのだと、そう思い込もうとした。
(やっほー。)
執務室の、窓の外。
そこにいるはずのない男がそこにいて、聞こえぬはずの声が聞こえる。
そして一瞬思考停止した後、すぐさま暢気に手を振るアンリを乱暴に室内へと引きずり込んだ。
「ぅわっ!?」
「一体何を考えているんだ、お前は…!」
いや、それより基地内の警備は一体どうなっているのだろうか。
まさかここまで賊の侵入を許すとは、惨憺たる現状を如実に示しているようで思わず頭を抱えてしまう。
せめてあの悪趣味な正装ならまだしも、不思議そうにこちらの顔を覗き込むアンリの装いは、知る者ぞ知る空中海賊『ドーラ一家』のものだ。
「ケント、大丈夫?」
「……、誰のせいだと……」
「いやぁ、『仕事』で近くまで来たもんだから、ちょっとケントの顔見たいなぁって思って。」
「……………」
今の自白は、聞かなかったことにしよう。
近い内に上がってくるであろう空賊による被害報告を思うと、頭痛はますます酷くなるばかりだが。
一刻も早く、何とかしなくては。
「ケント?」
「……頼むから少し黙ってろ。今、考えてるから…」
『仕事』帰りなら、ここまでの移動手段はフラップターのはず。
恐らく屋上にでも置いているのだろう、ひとまず人払いをし、後々『押収物』として運び出せば何とかなる。
後は、
「……アンリ。」
「うん?」
「今から服を用意する、とりあえずそれに着替えろ。それから俺の家に向かう。いいか?基地を出るまで大人しく」
「あ、じゃあさ!じゃあさ!」
「……何だ?」
「俺、今日泊まってもいい?」
「…………………」
本当に、一体何を考えているのか。
ケントは一瞬口を開きかけたものの、にこにこと無邪気に首を傾げるアンリを見て、ただ溜め息一つ吐き出したのだった。
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(そしてその後、)
(ケントの自宅にアンリが頻繁に訪れるようになるのはまた別の話)
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嘘つき、ロンリー。