天空の城を目指す物語

第三話


少女に触れそうになった瞬間、腰に回された腕。

浮遊感。


「バカッおまっ…ママの話聞いてなかったのかよっ!?連れていくのは女の子の方だっ!!」

「あれ?そうだっけ?」

「あぁ、もうっ!引き返してる暇なんてねぇ!そいつも連れてくぞ!」

「なっ…待っ、ちょっ…!?」


頭上の会話に口を挟む間もなく、次の瞬間には基地もゴリアテも遠くに見え、そして色付きの煙により次第に見えなくなっていった。



全ては一瞬の出来事だった。







「…ありえない…」


ぼそりと呟いたそれを拾ったらしく、不意に男がこちらを向く。


「え?何か言った?」

「…いや…」


何でもないとケントが首を振れば、男は不思議そうに首を傾げながらも再び作業に戻る。

二人が今いるのは飛行船の一室、恐らく貨物室か何かだろう。


ケントは溜息を吐いた。


(軍人が、空賊に拉致されるなんて笑えねぇ…)


一瞬不気味な笑みを浮かべる上司の顔が脳裏をよぎったが、何とかそれを振り払う。

そして先程から何やらごそごそと探し物をする男の背中をただただ見つめた。


(…しかし、分からないのは今のこの状況だ…)


特に拘束はされておらず、目の前の男も別に見張りという訳ではなさそうだ。


(俺が軍人だというのは知っているはずだ…なのに捕虜扱いもない…かと思えば船から放り出される様子もない…)


目的は一体何なのか。

何もされないと、それはそれで却って不安になってくる。


「!あった!」


不意に男が声を上げる。

どうやら目的の物を見つけたらしく、つられてそちらを向けば喜色満面の男と目が合った。


「ほら!これ!」

「は…?」

「俺のだから少し大きいかも…でも、ま、いっか!」


差し出されたのは男が着ているそれと同じ物。

強引に手に持たされて、ますます理解に苦しんだ。


「おい…これ…?」

「?着方が分かんないのか?」

「っ!いやっ分かる!大丈夫だから!だから、ちょ、脱がせようとすんな…!」






一悶着後。

少し荒くなった呼吸を整え、ようやく自分が抱いた疑問について質問してみると


「ママが『拾った奴が面倒見な』って!」


男は無邪気にそう答えた。


「…ありえねー…」





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自分は犬か何かですか?

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嘘つき、ロンリー。