紅い飛行艇乗りの物語

むかしばなしT


時には昔の話をしよう。










「おぉ…マルコの奴、特等席に座りやがったな。」


ヒュウッ、と下品に口笛を吹いた男の視線の先で、一基の飛行艇が水面からゆっくりと離れていく。

操縦席にはマルコ、その後ろには



慌てたようにスカートを押さえるジーナの姿が。


「…だから俺は止めとけと言ったんだ。」


遠目でも分かるほどマルコの耳が赤い。

うっかり振り向いてしまったのだろう。


隣の男が笑う。


「ならちゃんと理由まで言ってやれよ。」

「…じゃあお前はどうなんだ?お前だって、ああなることぐらい分かってたんじゃないのか?」


少し責めるように口調を強めてみたが、男は苦笑しながら肩を竦めるだけでそれ以上何も言わなかった。


ますます腹立だしくなった俺は男から視線を外し、二人の乗った飛行艇に意識を集中させることにした。



こうして隣に立ってはいるが、正直あまり気に食わない男だ。


マルコとジーナの友人でなかったら、きっと話すこともなかったと思う。


しかも聞けば、あの軍の英雄の孫に当たるらしい。



『ケント…ってあのケントか?』

『あぁ、親がじい様の名前を付けたんだ。』


確かにそれを聞いた当初は多少浮かれもしたが、熱が冷めるのも速かった。



『でも、ジュニアって呼んでもらえるとありがたいな。』



そう言って笑う男に周囲は「偉大な祖父を持ってプレッシャーを感じているのだろう」と苦笑したが、俺にはそうは思えなかった。


「っと、そろそろ降りてくるな…近くに行っとくか、フェラーリン。」

「……あぁ。」





奴はただ、逃げただけだ。





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あれはそう、
まだ君を知らなかった頃のこと。

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嘘つき、ロンリー。