神々の集う湯屋の物語

いらっしゃいませ


お客様は神様です







「まったく、今度はどこをほっつき歩いてたんだい。」

「さぁなァ…んなことよりおら、土産だ。」

「…何だって?」


予想通りの訝しげな視線を受け、信用ねぇなァと笑ってみせた。


「ガキがいたろ?そいつにくれてやれ。」


そう言いながら色煌びやかな鞠をころころと手の平で転がした。

そして無造作に放り投げれば、頭達が「おい」「おい」と中継し、主の下まで運んで行く。


湯婆婆は嫌々そうにそれを手に取ると、妙な呪いが掛かっていないか隅から隅まで確認し始めた。


「一体どういう風の吹き回しだい?」

「別にィ?単なる気まぐれじゃねぇの。」

「ふんっ…だからってこんなもんで絆されやしないからね。」

「あァ?」


結局何も見付けられず、諦めて鞠を机の上に置いたものの、疑いは晴れていないらしい。

湯婆婆は改めてこちらを睨めつけてきた。


「ただ飯食わせてやってんじゃあないんだ。仕事はきっちりやってもらうよ。」

「はっ…仕事だァ?魔女風情が、誰に口利いてやがる。」


興醒めだと言わんばかりに背を向ければ、「待ちな、ケントっ!」と追い掛けてくる声。

それも無視して、ひらひらと手を振りながら扉へと足を進める。


「話はまだ終わっちゃいないよっ!」

「てめぇに言われるまでもねェ…俺ァ『ここ』が結構気に入ってんだ。加護ぐれェ、ちゃあんとくれてやらァ。」


まァそれも、俺が飽きるまでの話だが。

吐き捨てるように小さく付け加えた言葉は扉の閉まる音と重なり、そして消えた。




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客でなくても神は神です

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嘘つき、ロンリー。