神々の集う湯屋の物語

第二話


捕らえたのは、彼。








「その様子だと、事はぜぇんぶ済んじまったみてぇだなァ。」


湯婆婆の部屋を出たところで、ハクと千尋の背中に声が掛かる。

振り向けば扉横の壁に寄り掛かったケントが、にんまりと笑みを浮かべていた。


「…どこにいた、ケント。」

「あァ?俺がどこにいようがてめぇには関係ねぇだろうがよ。」


ハクに睨まれてもどこ吹く風。

そんな二人に挟まれた千尋は一人、おろおろと視線をさ迷わせる。


(ケント、って…ハクが言っていた人…?)


『釜爺に会うんだ。この時間ならそこにケントという男がいる。』


ハクとは真逆の黒い服の、大人の男の人。

どこか怖い感じのする人だ。


(ハクはこの人を頼れって…悪い人、じゃないのかな…)


「しっかしお前が俺を頼るなんざァ、気分がいいなァ!」


げらげらと声を上げて笑うケントに、ハクはばつが悪そうに顔を逸らす。

そして「行こう」と千尋を促した。


「まァ、待ちなって。俺ァケントってんだ。」

「ぁ、あたしは、」

「千。」


何も言うなとばかりに言葉を遮り、今度はその腕を引く。

名乗り損ねた千尋が恐る恐る振り返ると、相変わらず笑ったままのケントがひらひらと手を振っていて、


「困ったことがあったらいつでも言いなァ?助けてやんよ、嬢ちゃん。」

「は、はい!」


ハクがまた、ケントを睨みつける。

千尋は気付かない。


そんな二人の後ろ姿を見送って、ケントは肩を竦めた。


「……さぁて、ばばあに何て言い訳すっかなァ…」




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囚われたのは、誰?

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嘘つき、ロンリー。