神々の集う湯屋の物語
第四話
すべてを投げ出して
「くァ…っ」
欠伸を隠そうともしないケントが廊下を進めば、恐ろしげに道が開けていく。
生憎、それを咎める者はいなかった。
(あーァ…つっまんねぇなァ…)
何もかもが。
釜爺に「邪魔だ」と追い出され、代わり映えのない宴は出ても怠いだけ。
見目麗しい女達の顔も、見慣れたものばかりですっかり飽きてしまった。
(ハクの野郎もどこに行きやがったんだか…)
それは動向を気にすると言うより、ただ単純に外へ出られない鬱憤をぶつけたいだけ。
ハクが今どのような思惑の下で動いているのか、ケントは知らないし特別興味もなかった。
だが何となく推測は出来る。
それも、とてもつまらない推測が。
(所詮は魔女の弟子って訳だ。)
人間の娘を引き込んだ時はやるもんだと関心したが、それだけだ。
面白みもない。
「…本当、つまんねぇなァ…」
「ケント様っ!」
「あァ?」
ばたばたと慌ただしい足音に振り向けば、兄役の男がどうにかしてくれとケントに縋り付く。
飛んで火に入る夏の虫。
不意にケントは口元に笑みを浮かべ、
「お腐れ様が、ご来店を…っ!」
期待は一瞬にして砕かれた。
「…暖簾を潜ったんなら客だろうがよ。」
客でなければ油屋の誰かが手引をするか、あるいはケントよりも力があるものしか油屋には入れない。
前者はともかく、後者はまずありえない話だ。
「ちゃあんと持て成してやれや。」
煩わしげにそう突き放せば、兄役が悲痛な声を上げた。
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すべてが逃げ出して
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嘘つき、ロンリー。