神々の集う湯屋の物語
第六話
足元を掬われ
「…繁盛してるなァ…」
腐れ神かと思えば川の主。
上客かと思えばカオナシ。
次から次へと退屈しないものだと言うのは勿論、皮肉だ。
(ハクの野郎は…銭婆の気配が途中切れたのも気になるが……)
「お前が手を抜いたせいだよっ!何とかおしっ!」
「…しゃあねぇなァ…」
辺りを見渡せば戦々恐々。
暴走するカオナシはどうやら一人の娘にご執心のようで、その娘を背後に庇うケントへ真正面から向かって来る。
檄を飛ばす湯婆婆がうるさい。
「相手が悪かったなァ?カオナシよォ…」
いつの間にかその手に握られた日本刀。
すらりと鞘から抜かれた刀身は鈍い色を放つ。
「っ、待って!」
「あァ?」
ケントが一歩踏み出したところで、その腕に千がしがみついた。
「あの人、私が中に入れたんです!だから私が外へ…っ」
腕伝いに感じる震え。
カオナシを恐れてか、ケントの刀を畏れてか。
ただその真っ直ぐな眼差しを受け、ケントは小さく笑った。
「…そうかい。なら頑張んなァ?」
「ケントっ!」
「あのっケント、さま!」
お役御免と踵を返したケントを再度呼び止めた千。
「釜爺のところにっ!ハクがっ」
最後はカオナシにより遮られたが、その名前だけでケントには充分だった。
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その手で救って
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嘘つき、ロンリー。