神々の集う湯屋の物語

第八話


一息吐く







千尋を送り、油屋まで戻ってきたハクはそのままの足でケントの下へ向かった。

そこかしこに未だざわめきが残り、余韻に浸る中、ケントだけがいつもと同じ調子だ。


「帰ったのか、あの娘。」

「何故見送りに来なかった?」

「そりゃあ一歩でも出りゃあ二度と敷居を跨がせねぇって、あのばばあが言うからよォ。」


俺も本当は行きたかった、なんてどこか笑いを噛み殺しながらケントが言う。

ハクは特に気にしなかった。


「千尋が、そなたによろしくと言っていた。」


一瞬、ケントの視線がハクから外れる。

それも本当に一瞬のことで、すぐに打ち消すようにケントは笑った。


「すげぇよなァ…何もかも変えて行っちまったぜ?あの嬢ちゃん。」


げらげらと、いつかのように響く笑い声。

それにつられるようにハクが小さく笑う。


「で、どうすんだい?」

「?何がだ?」

「名を取り戻したんだろうがよ。」


魔法使いになりたいと油屋を訪れた一匹の白龍。

いつしかその名を忘れ、小間使いのように扱われてきた。


染み付いた穢れを払うにはどれだけ時間が掛かるだろう。


それでもここに留まる覚悟があるのかと、ケントは問う。


「…そなたはどうする?」

「あァ?」


質問を質問で返され、ケントの顔が歪んだ。




「そなたは何故ここにいる?」




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帰路に、着く?

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嘘つき、ロンリー。