河神様とある人柱の話

寓話


常日頃ならば聞こえる童らの楽しげな声も、今は何も聞こえてこない。

そして誰もいない河原で、少年が一人、佇んでいた。


(何故…)


ただ茫然と、荒れる水面を眺めていた。


「坊主。」


ふとそこへ、背後から掛かる声。

振り返った一瞬、少年の目が見開かれ、口元が小さく動いた。


そんな少年の様子に気付かず、声は続く。


「あんまり川に近寄らない方がいいぞ。」


声の主は少年よりも少し年上の青年だった。

重そうな桶を抱えながら、笑みを浮かべている。


そして少年の隣に並び、川を眺めた。


「今、神様の機嫌が少し悪いみたいだからな。」


その横顔を見つめ、しばらく物言いたげな表情をした少年は、青年につられるようにして再び視線を川へと戻す。

「そうか」と小さく呟かれた言葉は、濁流に飲み込まれていった。




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どうか鼓動の音も掻き消して。


(今は何よりも川を鎮める方法を考えなくては)
(そう思いつつも、無意識に視線はまた隣へ)

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嘘つき、ロンリー。