本と楽器のハーモニー
木曜日
「で、そっちは終わったのか?」
「…予習まで、やらされた…」
遊びに行く前からどこか疲れている友人に、一瞬掛ける言葉を見失った。
だがよく考えたら別に悪いことじゃないな、と即切り替える。
その傍らで友人二人による査定が行われていた。
まじで厳しい。
「はい、ケントも合格ー。」
「よくやった、褒めてつかわす。」
「ははー、身にあまる光栄…てか、ここまでする必要なくね?」
そんなこんなで「この夏最後の思い出作り」当日になりました。
全員集合、査定をクリアした後はバス停までダラダラとだべりながらの移動。
俺達が勉強している間暇だった他二人はよほど暇だったらしく、旅のしおりなるものまで作っていた。
「というか『ダラダラとだべりながらの移動』まで書いてあんの、少し怖いんですけど。」
「予期出来てしまったんだ、仕方ない。」
「あ。あれ、天沢じゃね?」
「天沢、だと…?」
言われた方向を見れば、確かに前からやって来る自転車は天沢のようだ。
若干一名、天沢と(一方的な)因縁があったが、気にせず手を振ってみた。
責めるような声なんて聞こえない。
「おー、今日も図書館かー?」
近くまで来ると律儀に自転車を止めた天沢。
ここ数日の交流が実を結んだらしい。
「…どこか行くのか?」
「少し遠出して海と山の両方満喫する予定。まぁ、日帰りなんだけどな。」
「天沢も来るか?」
さらっと会話に入って来た友人がごく自然に天沢に問い掛ける。
一体どんなスキルだ。
天沢の方もごく自然に受け止め、少しだけ考えた。
「…いや、俺はいい。」
何だろう、この敗北感。
一人勝手に負け犬根性を出している間にも、友人らと天沢は普通に別れの挨拶を交わしていた。
まじで何だろう、この敗北感。
「さすがに『天沢と遭遇』までは予期出来なかったな。」
「いや、それ予期してたらまじ怖いから止めろ!」
「ケントー、行こうぜー。」
友人に促され、もう一度気持ちを切り替える。
「じゃあな、天沢。車には気を付けろよー。」
んで、次は学校で会おうな。
歩き始めた三人の後を追いながら、そう続けようとした瞬間、呼び止められた。
「ん?」
「楽しんでこいよ。」
…見間違いでなければ、うっすらと浮かべられたのは笑み。
とりあえず、土産を買って明日渡そうと思った。
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旅に出るのは 木曜日の子ども
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嘘つき、ロンリー。