本と楽器のハーモニー
金曜日
「はい、これ温泉饅頭。」
「…お前ら、昨日どこに行ってきたんだ?」
有言実行とばかりに出会い頭に土産を手渡せば、訝しげな視線が返ってきた。
旅のしおり通りに行動した結果がこれなのだから仕方ない。
とりあえず曖昧に笑いながらいつもの席に座れば、天沢は「まぁ、さんきゅ…」と追求するのを諦めたようだ。
饅頭の箱を鞄に仕舞い、再び読書に戻ろうとした天沢が不意に手を止める。
「どうした?プリント、持ってくるの忘れたのか?」
「あー、いや…」
その手元をぼんやりと見つめながら考えた。
宿題は済んでいるし、土産も今渡したので特にこれ以上することはない。が、帰る気も起きない。
ここは天沢に倣って本を読むべきだろうか。
試しに例によって例の如く天沢の前に積み上げられた本を一冊、手に取ってめくってみる。
「…お前って本当、かっこいいよなー…」
何でこんな難しいの、読めるんだ?
めくってもめくっても、一向に内容が頭に入ってこないのは、本当に出来の違いだけ?
なんてしみじみと感想を漏らしていると、突然本を奪われた。
「あ、わり…」
「っ…」
「お?」
てっきり「返せ」だとか「触るな」だとか言われると思ったが、天沢は無言だった。
饅頭の箱同様、奪われた本と机の上の本が次々に、凄い勢いで鞄の中へ詰め込まれていく。
こちらは一切見ない。
「…おぉ?」
そして瞬く間に、天沢の後ろ姿は扉の向こうへと消えたのだった。
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惚れっぽいのは 金曜日の子ども
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嘘つき、ロンリー。